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2021年度

「地方創生賞(モノ部門)」

モノ部門つきみいくら
宮崎県宮崎市

概要

ふるさと名品「つきみいくら」株式会社Smoltは2019年設立の宮崎大学発のベンチャー企業である。弊社は、大学の研究シーズを活用して、山と海を介した循環型の養殖方式でサクラマスを生産している。2020年10月に完全養殖で育てたサクラマスから採卵を行い、プライベートブランド「つきみいくら」として販売を開始した。現在、鮭の資源は著しく減少しており、鮭という種の保全に加えてイクラの食文化の持続性が危ぶまれている。通常のイクラは北方海域を約4年回遊して育った天然の鮭から作られている。しかし、弊社では独自の確立した技術により、同じ鮭の仲間のサクラマスから2年という短い期間でイクラを作り、安定的に供給ができることから、海の豊かさを守りながら、消費者においしい水産物を届けるというミッションの実現ができている。
【ブランドらしさの表現】商品のパッケージはコンセプトである伝統的かつ革新的というテーマを反映させた「和モダン」なデザインで統一している。消費者がインターネットで弊社のプロダクトを見た時から、懐かしく新しい、と感じる体験の入り口を提供している。
【競合差別性】つきみいくらは自社で完全養殖されたサクラマスの卵を加工してできるプロダクトであり、これまでに命の源である卵を“養殖で作る”というコンセプトは他に類を見ない。サステナブルフードという観点での競合には、大豆ミートや培養肉といったものが挙げられるが、当社では魚をより自然に近い環境で育て、魚本来の成育、生き方をリスペクトした養殖スタイル(薬剤の使用を極力避ける、添加剤などを使用せず環境を整えることで魚の生育を促す、など)にこだわりをもっている点が競合差別的要素である。弊社では、これまでに魚を自然な形で交配することで種の選抜を続けており、会社としても生物本来の力を引き出し、育て上げるAnimal-respectな将来像を描いている。
【ポジショニング/提供価値】弊社代表上野は25歳と水産業には稀にみる若さで、高齢化の進む水産業界で消費者にインターネットやメディアを通じてより近い距離感でアプローチできるメリットがある。つきみいくらはこれまでの水産業には稀なビジュアルやコンセプトを持つ商品であり、ユーザーに「トレンド感」「消費することによる優越感」「イケてる感」「SDGsへの貢献」といった付加価値を提供できる、伝統的な水産物加工品とは一線を画すポジショニングを取っている。

PRポイント

研究・商品化の背景
○古くから日本人に親しまれる鮭鮭は北海道や北日本で伝統的に漁獲される水産重要種で、鮭の獲れる地域にはそれぞれの気候や風土に結び付いた独自の食文化が受け継がれている。例えば、鮭の身は新巻鮭やルイベなど多様な加工品になり、鮭の卵であるイクラは秋の味覚として代表的な食材である。また鮭は捨てるところのない魚とも評され、その中骨や皮、頭部なども加工に利用されるなど、日本人にとってなくてはならない資源である。
○減少が続く鮭資源鮭の日本国内の河川への回帰数は1995年の約90万尾をピークに減少を続けており、特に最近5年間での減少は著しく2020年は約20万尾である。原因としては地球温暖化に海水温の上昇があげられており、鮭の回遊時期に適水温域での生育ができず、結果的に生残率及び回帰率が減少すると考察されている。鮭の魚肉に関しては今日、世界的なサーモンブームにより地球規模で消費が伸びており、ノルウェーやチリの大規模養殖によって生産されたものが供給されている。一方で卵であるイクラの養殖をするプレイヤーは世界的に稀であり、命の源である「卵」のサステナビリティは担保されていない現状にあり、魚肉とは対照的に「獲る」ことで市場への供給が行われている。そのような現状から命の源である卵をもった鮭の雌は漁獲圧が強く、自力で種を存続させるのに地球温暖化と漁獲の二つの障壁に直面している。すなわち、種として鮭の保全を行うため、またイクラを使った地域の食文化を守るためには、天然の鮭資源に負担をかけない「イクラ」のサステナブルな取り組みが急務である。イクラは流通するほぼすべてが天然を回遊するサケを漁獲し、加工したものが流通している。しかし、サケの資源量は放流稚魚の数が多いにも関わらず年々減少を続けている。弊社ではサクラマスというサケの一種を完全養殖により生産を実現させており、イクラを自社内で養殖して生産、流通させることができている。すなわち、養殖でイクラを生産・流通することでサケ資源の保全に貢献できると考えている。サクラマスの循環養殖は淡水と海水の行き来により、魚を持続的に循環させ養殖することが特徴であり、そのプロセスの中で高水温への耐性をもつ家系の選抜を進めてきた。今後の地球温暖化による海水温上昇に適応した生物種を作ることで具体的な対策を講じ、目標達成に貢献できるという点が弊社の強みであると考えている。


参考サイト